「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
儂は続けざまに四回、素早く都市核を内包する砂獣を切りつけた。確かにこいつは異常だ。強くて速い。だが、獣である事は今までの砂獣と大して変わりは無い。人型になった意味はあまりないのが現状じゃ。確かに最初はその速さに翻弄された。じゃが、それも最初だけ。きちんとみて複数人で対処すれば、なんとか出来ない事は無い。いつだってそうじゃった。この世界には絶望が目の前に広がっておる。
それは一見、どうしようもないように思える。だが違う。ちゃんとどうにかする術はある。勇者様から与えられた力によって、攻撃も通ってる。
「ぐがぎゃあああああああ!?」
そんな断末魔の叫びを発して、砂獣が砂の上でもだえる。だがそれも直ぐにやんで、気持ち悪い動きで儂をみる。儂が一番ダメージを与えてるからか、奴の標的は儂になっておる。だがそれはありがたい。砂獣は再び砂を蹴る。奴がやる事はいつだって同じだ。その力とスピードで突っ込んで食いちぎる。
「それは見切った!!」
すれ違いざま、儂は曲剣を奴の頸に添えた。それだけでスパッと奴の頸が飛んだ。力なんて別にいらん。奴の勢いだけで、出来た芸当だ。
「おお!」
「やった!!」
そんな声が聞こえる。だが、奴は都市核を内包した砂獣だ。この程度でやられる奴ではないじゃろう。
「油断するな! まだ奴は動いておるぞ!!」
儂は皆をそう一喝する。そうなのだ。砂獣の体は頭を失ったというのに、動いておる。それも全く問題なく。
(やはり、都市核を抜き出さないとこいつは倒せんか!?)
その推測は最初から合った。いや、よしんば倒せなかったとしても、こいつを普通の砂獣まで弱体化させることは出来る筈じゃ。なにせ奴の特別製はあの都市核から来てるはずじゃからな。だからあの体から次は都市核を――
「うああああああああ!?」
――思考が途切れる。悲鳴の方をみると、鎧を着てた軍の一人の頭がなくなっている。頭がなくなってるのに、そのまま彼は立ってる。足下にはさっき飛ばした砂獣の頸がくちゃくちゃと何かを咀嚼してる。いや、何か……なんていう必要は無いじゃろう。あやつ、頸だけで人の頭を食べおった。
「あっ、ぎゃ、ぎゃぎゃぎゃぎゃ」
頸だけの砂獣がそんな声を漏らす。まるで笑ってるかのように聞こえるその声。そして次の瞬間、獣だった砂獣がこう言った。
「ぎょいしい」
その瞬間、儂はぞっとした。