「いっ!? つっ……」
野々野足軽は頭を抑える。そして自身の力を確かめた。なにせ今、この痛みは力を使おうとしたらでた。つまりは何か力に関連した痛みかもしれない。
だから力を体内だけで色々と弄ってみて確かめてる。
「なんか鈍い?」
そんな感じがした。もしかしたら誤差なのかもしれない。けど、そう感じた。なにか力落ちてる……というよりも、精度が下がってるというか……これはある意味で始めての感覚かもしれないと野々野足軽は思う。
確かに毎日限界まで力を使うことを心がけてる野々野足軽は似たような感じを経験してはいる。それはギリギリのギリギリ。その時になると、力を操るのが鈍る。それはきっと筋肉を酷使し続けて行くと、攣ったりするとおもうんだけど、その前兆として筋肉がプルプルして鈍くなるだろう。それと同じ感じだと野々野足軽は思ってる。
まあだからって力が攣るとかないが……確実に精度は落ちる。それと似てはいる……と野々野足軽は思った。けどそれよりももっとこう……抵抗があるというか?
「けど、使えないわけじゃない」
野々野足軽は気を取り直して再び手を突っ込んで、そして力を……力を……
「待てよ。既にこの穴の向こうには俺の力はあるはずだ。それなら……手を突っ込まなくても感じれるんでは?」
ふと気づいた野々野足軽だ。とりあえずやってみようと試みることにした。実際何もない……とわかってても、手を突っ込んでその先がなくなってるのはなかなかに変な感じなのだ。なので力を間接的に操ろうとおもった。実際、それはよくやってることだ。いつだって力と直接的に繋がってるわけじゃない。なにせ大切な人たち……それこそ平賀式部とかのところには常に力を常駐させてるし、監視が必要な奴らのところだってそうだ。
いつだって見てるわけじゃないが、いつでも把握できるようにはしてる。そして必要な時にその常駐してる力と繋がって見たり聞いたりできるのだ。
なら既に穴の向こうには野々野足軽の力があるのだから出来るはずだ。ただ……問題だと思ったのは、空間の違い。その隔たりがどんなものなのか……ということだろう。もしかしたら空間が隔たったら力を感じることは出来ないかもしれない……というのがあった。なにせ……だ。この穴は力を全く通さないからだ。
もしかしたら野々野足軽は力を切り離してる……と思ってるかもしれないが、ごく微弱な力で実は繋がってる状態だった……とかなら穴の向こうの力を感じるなんて出来ないかもしれないからだ。
実際無意識下でやってることってのは人にはある。けど、今回はどうやら大丈夫だったみたいだ。確かに最初は分かりづらかった。けど、もっと集中をすれば穴の向こうの力を感じ取る事ができた。まあその集中をするって事をやるたびに頭は痛くなるんだけど……でも頑張って手を突っ込まずに野々野足軽は再び存在を向こう側へとよこすことが出来た。